『佐賀県近世史料』の編さん計画着々と

東日本大震災による被災者の皆様に心からお見舞い申し上げます。

 『佐賀県近世史料』の編さんは、県内の市町史の編さんなど郷土の歴史解明の基礎資料として、また、佐賀の歴史的文化遺産の普及を図る目的で実施しています。

 その編さん計画について話し合う「佐賀県近世資料編さん委員会」が、去る6月5日に開催されました。ご参集された先生方は、佐賀城本丸歴史館館長の杉谷昭先生、佐賀大学名誉教授の長野暹先生、徴古館主任学芸員の藤口悦子先生、東京大学史料編纂所教授の小宮木代良先生、そして福岡大学の野口朋隆先生です。お仕事の都合で、九州大学の高野信治先生はご欠席されました。

佐賀県近世資料編さん委員会写真】
佐賀県近世資料編さん委員会


 決まりました、その計画について簡単にご紹介しますと、
 平成24年度は、第8編 思想・文化編、第4巻「古賀穀堂の著作集・書簡集」を刊行いたします。古賀穀堂(1778〜1836)は、寛政の三博士として有名な古賀精里の子で、佐賀藩弘道館の教授となった人物です。佐賀藩の学政を担った人物で、幕末維新期の日本を牽引した佐賀藩10代藩主鍋島直正の先生でもありました。日本をリードした佐賀藩の先進的な思想をこの資料集で垣間見ることができると思います。

 平成25年度は、第10編 宗教編、第3巻「浄土宗・浄土真宗法華宗」を刊行します。関ヶ原の戦いで西軍の豊臣方を応援し、敗北してしまった佐賀藩初代藩主鍋島勝茂。この一大危機を脱するために応援を求めたのが、小城出身の元佶長老と西本願寺准如上人でした。彼らの働きにより佐賀鍋島家はお家断絶の危機から脱したのです。鍋島家はこの恩に報いるために、元佶長老のために小城に三岳寺を、そして西本願寺のために願正寺を立てることとしました。この願正寺は、明治16年、初の佐賀県臨時県会が開かれ、同19年までここで開催されていました。この願正寺など各寺院の『寺社差出』を中心に、これらの宗派の寺院の記録を紹介します。単なる宗教編を超えた政治的事象が見え隠れする興味深い史料集になると思います。

 平成26年度は、第5編 対外交渉編、第2巻「白帆注進 外国船出入注進」を刊行します。
江戸時代、佐賀藩福岡藩と隔年で長崎警備を担っていました。この資料は、長崎に入港する外国船等を監視した遠見番から、佐賀の方に報告された記録集です。イギリスやオランダ、ロシアなどの外国船が詳細にしかも色彩豊かに描かれており、江戸時代の外国船の様子が挿絵付きで詳しく分かる資料です。

 最後になりましたが、今年度平成23年度は、第10編 宗教編、第2巻「臨済宗曹洞宗」を刊行します。鍋島藩主の菩提寺である高伝寺、蓮池藩主の菩提寺である宗眼寺などの曹洞宗寺院。また、龍造寺隆信の崇敬を受け、肥前国における臨済宗総本山として繁栄を誇った高城寺など各寺院の『寺社差出』を中心に、様々な記録類をご紹介します。

 『佐賀県近世史料』は今後も毎年一冊ずつ刊行し、江戸時代の生き生きとした佐賀の様子を皆様にお伝えしていきます。乞うご期待 !

佐賀県近世史料についてはこちら】
http://www.pref.saga.lg.jp/kentosyo/kinsei/kinseitop.html