『佐賀県近世史料』の編さんについて

去る11月2日、佐賀新聞社から、佐賀県立図書館の『佐賀県近世史料』の編さん事業に対し、「佐賀新聞文化奨励賞」をいただきました。〔11月4日付のブログ参照〕

 20年以上にわたるこの編さん事業に対し、佐賀県勢の発展と郷土文化の向上に寄与するものという評価をいただいたもので、これまで『佐賀県近世史料』の編さんに携わっていただいた編さん委員、執筆委員、事務局のメンバー、そして何よりこの編纂事業を応援していただいた皆様方のおかげだと感謝しております。

 現在、同館1階ホールで、“『佐賀県近世史料』の編さんとそのあゆみ”と題した小さな展覧会を開催していますが、今月29日(火)をもって終了いたします。そのため、引き続きこのブログでご紹介させていただきたいと思います。

■近世資料の現状と編さんの目的
 佐賀県に関する近世資料は、所在が確認され専門家による調査研究の対象となっている資料だけでも、約15万点余が確認されていて、膨大な量に達しています。このうち当館に収蔵する佐賀本藩関係資料〔鍋島家文庫(所蔵:財団法人 鍋島報效会、保管:佐賀県立図書館)〕の記録類だけでも5,500点余りにのぼります。
 また、支藩である蓮池藩小城藩鹿島藩、その他多久家・武雄鍋島家にも大量の資料が残っており、特に多久家は、佐賀藩の重職として幕末まで施政に参画した家柄で、貴重な資料が多く残されています。
 一方、唐津藩では、各時代の藩主に関する資料は少なくなりますが、唐津を中心とする東松浦地方は、庄屋史料等に重要なものが多数継承されており、地域に密着した資料が得られ、基肄養父地方や西松浦地方にも、多くの資料が残されています。
 『佐賀県近世史料』の編さん事業は、『佐賀県史料集成』(古文書編全30巻)の後を引き継ぎ、数多くの近世資料を編さんし、郷土の歴史解明の基本資料として役立ててもらおうとするものです。

■編さんの手順と実績
 『佐賀県近世史料』の対象となる資料は、厖大かつ多岐にわたりますので、佐賀県近世資料編さん委員会の先生方のご意見をお聞きしながら、下記10編の構成により計画的に編さん作業を行っています。
   第1編   佐賀本藩
   第2編   支藩(小城・蓮池・鹿島)
   第3編   唐津藩
   第4編   対馬藩
   第5編   対外交渉
   第6編   地方・町方
   第7編   産業
   第8編   思想文化
   第9編   文学
   第10編   宗教

 次に編さんの手順についてご紹介しましょう。
収録する資料が決定したら、まず執筆委員の先生方に古文書や古記録の解読を、そして監修をしていただく先生に解題を書いてもらいます。事務局は、解読された文字の確認と、不明瞭な文字の解読を行い精度を高めます。さらに註や索引を付け、全体の体裁を整え、印刷のための原稿を作ります。その原稿を印刷会社へ渡し、校正作業を重ね、印刷に取り掛かります。
 『佐賀県近世史料』は平成4年度に第1編第1巻を発刊したのを皮切りに、これまで19冊を数えました。今後とも継続して編さんを行い全40巻の刊行を目指しています。
 郷土史研究熱が高まっている今日、より多くの方々にこの『佐賀県近世史料』を活用していただきたいと思っています。


佐賀県近世史料