『源氏物語』の注釈書『萬水一露』(写本)
※東日本大震災による被災者の皆様に心からお見舞い申し上げます。
みなさん、おはようございます。
2月14日(火)から蓮池文庫『萬水一露(ばんすいいちろ)』(蓮池本)複製本の公開を始めました。
また、2月16日(木)の佐賀新聞にこのことを取り上げていただきました。
しかし、『萬水一露』って初めて聞かれた方が多いのではないでしょうか。
そこで、今日は『萬水一露』について少しお話したいと思います。
『萬水一露』は『源氏物語』の古い注釈書です。成立は16世紀、作者は能登永閑(のとえいかん)という連歌師(れんがし)であるとされています。
この資料は『源氏物語』を読み解くため、あるいは、『源氏物語』の和歌を解釈するために作られたのかもしれませんね。
これまでに、『萬水一露』の原本は確認されていませんが、国立国会図書館が所蔵する写本(国会本)が比較的原本に近いものと考えられています。
先日、ある研究者の方から、国会本『萬水一露』の序だけを見せてもらったのですが、蓮池本と内容がそっくり!!。(あくまで「序」だけの調査ですけれどね。)
国会本に近い写本は九州大学(九大本)にも所蔵されていますが、残念ながら九大本に「序」は残っていませんでした。
当館が所蔵している蓮池文庫の写本は全54冊のうち、51冊(3冊欠本)もの冊数が揃っているのです。
蓮池藩鍋島家に伝わる資料でもあり、当時の蓮池藩において、高い文化・芸術意識が育まれていたことも窺わせる大変貴重な資料です。
今回の複製本公開について、佐大地域学歴史文化研究センター特命教授の井上敏幸先生から、次のようなコメントを頂戴しました。
蓮池本が、独自な系統とされる国会本の系統であることが分かってきたことで、そうしたレベルの和歌の専門家が居たことが考えられる。とすれば、そうした人物の探索と同時に、蓮池文庫の歌書類全体の調査を進めていくことで、その性格が明らかとなり、ひいては、蓮池藩の文事の研究に資することになろう。
是非、多くの方々に、この『萬水一露』(複製本)を御鑑賞いただくとともに、源氏物語の研究や郷土の歴史・文化の研究などにも大いに御活用いただきたいと思います。
蓮池本の詳細については『葉隠研究』vol.72に掲載予定(執筆:郷土調査担当 百武由樹)です。
【『萬水一露』写本】
【『萬水一露』複製本】