古文書講座(中級編)を開催しています その1

東日本大震災による被災者の皆様に心からお見舞い申し上げます。
 こんにちは。

 10月8日(土)から古文書講座(中級編)を開催しています。
 今月から来年3月まで、月1回(第2土曜日 13:30〜15:00)のペースで伊藤昭弘先生(佐賀大学地域学歴史文化研究センター准教授)と参加者の方々が一緒にテキストを解読していきます。
 伊藤先生には、一昨年度から引き続いて講師を担当していただきます。

 今年度は、深江家文書(ふかえけもんじょ)や鍋島家文庫(なべしまけぶんこ)をテキストに、より実践的な古文書の読み方を学ぶとともに、江戸時代後期の佐賀藩の財政事情とその時代背景についてこれまでの「定説」にとらわれない解読を進めていただきます。
 ぜひご期待下さい。

 さて、今回のテキストは「口上覚」(こうじょうのおぼえ:深江家文書)ですが、参加者の方々により理解を深めていただくために佐賀藩の財政についての丁寧なレクチャーをしていただきました。
 「口上覚」の内容については次回紹介することにして、今回はレクチャーの内容を簡単に紹介します。

 佐賀藩の財政についての資料として「一般会計」に相当する部分の収支を記録した『御物成并銀遣方大目安』(以下、大目安)が鍋島家文庫に収められています。この大目安は、約100年分が残っていますが、明和元年(1764)から安政4年(1857)まで、江戸中期から幕末までの94年分がそっくり残っています。7代藩主重茂から10代藩主直正までの時期にあたります。
 この大目安の分析から、伊藤先生は次のような重要な視点を指摘されました。

・毎年収入が支出を上回り、多額の剰余金を翌年に繰り越し、佐賀藩の財政は潤っているいるように思える
・しかしながら、佐賀藩財政は苦しいと言われてきた。
佐賀藩には、「一般会計」とは別に「特別会計」があり、毎年両者の間でお金のやり取りがあった
佐賀藩には成立当初から借金があり、返済の滞りにより債権者から訴えられたこともあった。
・借金があるが、お金もあった。借金は、財源不足を補うために行うものというよりも「積極的な資金調達」と考えることができる
・毎年の多額な借金も裏を返せば毎年多額の資金を調達できる安定したツールを佐賀藩は有していたとも解釈できる

 佐賀藩の財政に関する伊藤先生の研究成果「「続 藩財政再考−佐賀藩財政に関する一試論−」(佐賀大学地域学歴史文化研究センター 研究紀要 第3号 2009)は以下で読むことができます。

http://www.chiikigaku.saga-u.ac.jp/ito.pdf

 次回も、以上のような視点からの解読が進められます。従来の佐賀藩の財政に対する「目からウロコ」の理解が生まれるのではないかと思います。

古文書講座(中級編)①の様子

古文書講座(中級編)の様子